Zhu Yifan(D2)の論文が公開されました。

学術論文

Zhu Yifan君(博士課程2年)の論文が公開されました。概要は以下の通りです。

OPEN ACCESS!!!
Virus removal by membrane bioreactors: A review of mechanism investigation and modeling efforts
(膜分離活性汚泥法によるウイルス除去:メカニズムとモデリングに関する取り組みの総説)
Yifan Zhu, Rong Chen, Yu-You Li, Daisuke Sano
Water Research

[背景] 膜分離活性汚泥法および嫌気性膜分離法の下水処理への適用は、下水処理プロセスに比べて数多くの利点が指摘されています。これらの膜分離法により得られる水質は良好ですが、サイズの小さいウイルスの除去に関しては完璧ではありません。膜分離法によるウイルス除去プロセスは、複雑な物理化学的および生物学的メカニズムが関与しており、その理解が十分には行われていない状況です。また、水安全計画(Water Safety Plans:WSP)や衛生安全計画(Sanitation Safety Planning:SSP)など世界保健機関が推奨する水安全管理の枠組みでは重要管理点のリアルタイム監視を求めていますが、水中ウイルスの検出には時間が掛かることから、数学的モデルを用いたウイルス除去効率予測が代替案として提案されています。

[概要] 本論文は、膜分離法におけるウイルス除去メカニズムと、関連するモデリングに関するこれまでの取組みの総説です。これまでの研究では、膜分離活性汚泥法は下水再生利用を可能にする優れたウイルス除去性能を提供できると報告されていますが、実際のウイルス除去性能は運転条件によって大きく異なります。浮遊バイオマスや膜ファウリング物質へのウイルス吸着は、どちらも反応槽内のバイオマスの成長に起因するため、その予測は簡単ではありません。膜間差圧とバイオマス量は、ウイルス除去と最も相関する2つの要因と言えます。ただし、物理モデリングに関しては、多くの試みにもかかわらず、複雑な基礎メカニズムと関連する要因間の複雑な関係により、パラメータと係数を調整する労力が多大となり、開発は困難な状況にあります。近年、水質予測や生物反応槽の運転制御に採用されているデータサイエンスの手法は、非線形モデルの解法において圧倒的な優位性があり、ウイルス除去モデリングへの適用が期待されます。

 

本研究はJST-SICORP「下水再生利用におけるエネルギー回収と健康リスク管理を実現する新規技術の開発(JPMJSC18H6)」及び中国・国家重点研究開発計画(2017YFE0127300)によって行われ、2020/10/14にWater Research誌上で公開されました。

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