門屋俊祐君(D3)の論文が出版されました。

学術論文

博士課程3年・門屋俊祐君の論文が出版されました。概要は以下の通りです。

OPEN ACCESS!!!
Bottleneck Size-Dependent Changes in the Genetic Diversity and Specific Growth Rate of a Rotavirus A Strain
(ボトルネック効果がロタウイルス集団の遺伝的多様性と増殖能力を変化させる)
Syun-suke Kadoya, Syun-ichi Urayama, Takuro Nunoura, Miho Hirai, Yoshihiro Takaki, Masaaki Kitajima, Toyoko Nakagomi, Osamu Nakagomi, Satoshi Okabe, Osamu Nishimura and Daisuke Sano
Journal of Virology, May 2020, Volume 94, Issue 10, e02083-19.

[背景] 胃腸炎ウイルスや呼吸器ウイルスの多くは高い変異速度を有するRNAウイルスであり、異なる遺伝子配列を有する個体を多数内包する集団”quasispecies”として存在しています。Quasispeciesの集団構造は、遺伝的に異なる個体を生み出す“変異”、環境変化に有利な個体が優先的に集団に生残する“自然選択”、次世代の集団に残存する個体は確率的に決まるという”遺伝的浮動”によって変化します。ウイルス集団構造の変化は感染力や毒性、増殖能力などの表現型に影響を与えるため、RNAウイルスの感染症被害が依然として制御されていない要因の一つである可能性があります。遺伝的浮動が起こり得る例として、RNAウイルスがヒトの体内から患者糞便と共に排出された際、一部のウイルス粒子のみが確率的に選ばれ次の感受性者へと感染する状況が挙げられます。このとき、ウイルスの集団サイズは一時的に急減し(ボトルネック効果)、伝播に成功したウイルス粒子の感染・複製により新たな集団が形成されます。

[成果] 本研究では、ヒトーヒト間の伝播におけるボトルネック効果を想定し、代表的な胃腸炎ウイルスであるロタウイルスを用いて希釈を伴う連続培養実験(下図)を行うことで、希釈倍率を高く設定(=stronger bottleneck)したときに集団の遺伝的多様度及び増殖能力が増加することを確認しました。ボトルネック効果がウイルス集団中に新たなスペースを創出し、次世代シーケンサー等では本来検出できない領域 (hidden layer) に存在していた変異個体がそのスペースに進出することで遺伝的多様性が高くなるものと考えられます。本研究の成果は、ヒトーヒト間伝播に介在するボトルネック効果により新たなウイルス系統がランダムに出現し、集団構造変化に伴う表現型の変化によってRNAウイルスのアウトブレークが毎年発生する状況を説明しうるものです。

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